ゴシンボクの木

※ぽわんと浮かんだおはなしをのせています。


-----------



お山の中腹に
忘れ去られたお社がありました。

人が来ないのでお社は苔むし
木々も高く高くそびえ立ち
外からお社を隠しておりました。

穏やかな昼下がり
一番背の高い木が突然
「一番背が高いから僕がゴシンボクだ。」と言いました。
それを聞いて、一番太い木が
「何を言う。一番太いから僕がゴシンボクだ。」と言いました。
次に一番年寄りの木が
「一番年寄りじゃから、ワシがゴシンボクに決まっておる」と言いました。

三人でワイワイ言っておりますと
近くの木々も騒ぎだし
私が一番細いからゴシンボクよ。
僕が一番赤いからゴシンボクだ。
ワシが一番枯れているからゴシンボクだ。
と口々にいい始めました。

そこへ野ネズミが通りかかり
木々たちにむかって
どうしたの?と尋ねました。

木々たちは我こそはゴシンボクだとネズミに主張しました。

ネズミは困って、ミミズのような尻尾をくりくり曲げながら

それなら一番若い者がゴシンボクだと言いました。

何を言う!と木々たちは怒りましたが
ネズミは、ほらごらんと
ネズミと同じ色をした
ふわふわの茶色の土を指さしました。

むっくむっくと、今うまれた芽が顔をだし
ふわぁっと可愛くあくびをいたしました。

木々たちはみんなその姿にうっとりです。

赤ちゃん木の芽はぽかんとしています。


赤ちゃん木の芽の隣から、むくむくむくっと
また別の赤ちゃん木の芽が顔をだしました。

季節はちょうど春でしたので
次々と赤ちゃん木の芽がうまれます。


木々たちはネズミをじろりとみつめました。


ネズミはそこだけ白いお腹をたぽたぽさすりながら
「本当はみんなゴシンボクなんだよ。」と答えました。

そこへ一羽のメジロがやってきて木々たちに尋ねました。

「ねえ。ゴシンボクってなぁに?」

みんなキョロキョロ慌てながら
一番年寄りの木を見つめました。
年寄りの木は
コホン、コホン。と咳払いをして
ちょっとえらそうに
「一番背の高い木に聞いてごらん」と言いました。

一番背の高い木は、みんなに見つめられてオドオド。

本当はカラスが
ゴシンボクって凄いんだぜ。と言っていたのを
聞いただけだったのです。


その様子を見て
ネズミが毛繕いをしながら
なぁんだ。みんな知らないのか。と言いました。



そして、少し遠くの巣穴へかけてゆき
尻尾をピンと立てて
僕も知らないんだ。と言うと
奥へと引っ込んでしまいました。


遠くで野犬の遠吠えが聞こえます。

もうすぐ日が暮れるのです。


木々たちはちょっとモジモジ…


いつの間にかメジロもいなくなっておりました。
















[PR]
by denmosou | 2018-02-18 15:59 | 狛さんたちのおはなし | Comments(0)